2010年頃にあった床材交換の顛末まとめ
TwitterでRTした81120Fの車内写真がきっかけなのですが、今回は2010年頃に発覚した81120F、9000系、10000系、50000系であった床材交換の顛末についてです。
当時の車両の床材も写真を撮っていたはずなので、折を見てまとめましょうか。
— lofter@ぱっしょんと〜ぶ (@passiontobu8571) 2020年6月2日
当時の資料では528両が対象となっており、かなりな時間をかけ床材を張り替えていた記憶があります。
東武さんからすれば耳が痛い話で恐縮だなぁと思いつつ、車内の写真を当時記録していたのですが、HDDのフォルダに放りこんだままサイトの方にもまとめていないことに気がつき、手持ちの写真を引っ張り出してみました。
〇鉄道車両の床材料の交換指示について https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo01_hh_000027.html
(2020年6月11日チェック)
ことの発端は2010年11月に国土交通省でプレスされた、複数の鉄道会社で使用している床材が「燃焼性の規格を満たしていない」という指示でした。
(ツイートでは思いっきりメーカー名を出してしまいましたが、どう見ても某アルミ製ブランドの車両と、これと同時期に修繕を受けた車両が対象となっているような気が・・・これは気にしすぎでしょうか…
しかも、ツイートで2011年と書いてしまいましたが、正式には2010年でしたね。失礼しました)
そもそも、鉄道車両に使用する材料は燃焼試験を行い、不燃性、極難燃性、難燃性と言った判定を行わなければなりません。
特に、2003年の韓国大邱地下鉄火災をきっかけに、従来の燃焼性試験に加え、コンカロリーメータを使用した試験が追加されています。
材料の燃焼試験は、実際に使用する環境下での試験が必要で、例えば床材であれば床材単体と床鋼体(アルミ等)とを貼り合わせて試験を行う必要があります。今回の事象は床材のみで試験を行うと基準を満たしていなかったというものでした。
国土交通省からこのような「指示」が出るというのはかなり厳しいものと思われます。
当時の床材交換対象車はというと・・・。
これを機に、各社において当該の床材を使用していた車両は交換が実施されました。
東武鉄道の対象車両は528両とのことで、内訳は計算すると以下の通りのようです。
・8000 4連×1編成 4両(81120F)
・9000/9050 10連×9編成 90両(9102~08F・9151・9152F)
・10000 6連×9編成 54両(11601~09F)
・50000 10連×9編成 90両(51001~09F)
・50050 10連×18編成 180両(51051F~68F)
・50070 10連×5編成 50両(51071~75F)
・50090 10連×6編成 60両(51091~96F)
このタイプの床材の歴史を紐解くと・・・
時間を巻き戻すと、発端は2004年3月に遡ります。
当時新型車両として計画されていた50000系の製造に際し、車内意匠の試行として当時西新井工場で修繕工事を受けていた81120Fの床材が変更され、ドア前がクリーム色、それ以外の通路部等がベージュ系のものとなりました。折しも、この編成は西新井工場からの最終出場車でもあります。
▲8000系の車内(従来車と修繕当初の81120F)
その後、2004年11月に51001Fが登場します。
座席前と通路部で濃淡を使い分けた2色のグレーの床材となり、ドア前は注意喚起のため黄色としており、これ以降の50000型、50050型、50070型は同様のデザインとなっています。
▲50050型の登場時の車内、なお座席モケットは懐かしのウィステリアパープル。なお、50000型増備車(51003F~)、50050型の増備車(51061F~)は紺色のモケットとなっています。
一方、修繕工事で内装を変更した9000系(9000型・9050型)と10000系は濃色グレー1色、ドア前は黄色となっています。
なお、座席がロング/クロスで転換する50090型についても、上記の50000系と異なりグレー1色となっています。
▲9000系修繕車と10000系修繕車の車内。
9000系は修繕後から紺色のモケットですが、10000系は11606F以降が紺色となっています。
国土交通省の指示が出されて以降・・・。
2010年に上記のプレスが発表、順次床材が対策品に交換されていきます。
長編成の車種が多いことから交換にはかなりな時間を要していたと記憶しています。
(当時、交換完了予定としては2014年上期としています)
基本的には当時の配色パターンは変えていませんが、若干色が濃くなっています。
また、特に変わったのがドア前の注意喚起の黄色が濃くなったほか、丸型の滑り止めが増えたのが特徴です。
▲50050型と10000型修繕車、何れも元の意匠を意識しつつ、色味が濃くなっている。
ただし、大きく変わったのが81120Fでした。
ベージュとクリームの2色の床材は9000系、10000系と同様にグレー1色を基調とし、ドア前が黄色の滑り止めとなりました。
もともとこの床材を採用して他編成が1編成のみの存在だったことから、床材交換で消滅したこととなります。
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▲床材が交換された81120F、色味は9000系、10000系と似ている。
また、この時には平行して100030型の修繕工事が行われていましたが、対策品の床材が修繕工事時点から敷かれていました。
▲10030型修繕車(11636F)の車内、床材は濃色のグレー1色となっています。
余談ですが、この時に東上線に所属する編成は修繕工事と併施で運転台撤去工事が行われていますが、乗務員室だった部分は張り替えていない編成がいたりします。これは修繕時期によって違いがあり、また別で取り上げたいと思います(というかそもそも編成ごとの差異が追えていません・・・)
▲クハ16641の運転台撤去部、乗務員室だった部分は修繕前のまま
と言うわけで、当時の経緯をまとめてみました。
安全基準を満たすのは重要なことでありますが、約4年かけて528両の交換計画を立て、実際に施工された関係者の方の苦労は非常に大変だったように思います・・・大変お疲れ様でした…。